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俺の男に手を出すな

第3章 ガネーシャ

【智side】
「それねぇ、アリヨシさんから貰ったの
ヒッチハイクの時、向こうで手に入れたんだって
良いものだから、お守りになるって言われたよ」

リビングに戻って来た風呂上がりの翔君が、オイラの背中から無邪気に言った。

「ふぅん、じゃぁ、アリヨシさんが持ってれば良いじゃん」

良いものなら手放さないよね、普通。
まして、あの人だろ、何かある。

タオルで頭をわしわしやりながら翔君は続けた。

「俺もそう言ったんだけどね
なんか、当分インドには行けないから駄目?
なんだってさ
自分には手に負えなくなってきた、
とか、言ってたなぁ」

え~、マジか。
手に負えないものを寄越すなよ~。

「何か困ったら大野君が多分わかるから、
って言われたけど、どういう意味?」

「…………」

それは、何か困ることが起こるって意味か?
思わず手で額をさする。
自分の口角が下がってくるのがわかる。

しょぉ、なんでもらってきちゃったのぉ…?

「あれ、渋い顔だね
そうだ、日本酒もくれた、ちょっと飲もうよ
冷で良いでしょ?グラス持ってくる」

「…うん…」

翔君がテーブルに置いた瓶を見やると、一頃は入手が難しいと言われてた人気の銘柄だ。

獺祭、って確か、カワウソが魚を並べる様子が、神様に供物に捧げて祭祀をしてるように見える、って意味だよな。

よりによって、これと一緒にくれるってことは…、押し付けられたな。

アリヨシさんの悪びれない笑顔が頭に浮かんだ。
ゴメンネ、って顔の前で手を合わせてる。

しょうがないなぁ。

取り敢えず、相手は神様だから丁重にしないと。
後で、もっと高い位置に置いた方が良いかな…。

「翔君、グラス3個にして~
冷酒用のおちょこがいい~」

オイラは胡坐の上に肘をついて顎を支えてた不遜なポーズを改める。
たれ目の神様が、じーっとこっちを見ていた。

やれやれだぜ。

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