狂恋 ~狂おしい恋に身を焦がす~【BL】
第1章 10年ぶりの再会
オレは二度目のため息をつきながら、缶コーヒーを開けて飲んだ。
いつも飲むより、苦く感じられた。
「…分かった。どこで話をする?」
「私のマンションに来てください」
そう言ってオレの腕を放し、胸ポケットからメモを取り出した。
「ここが私の新居です」
メモを受け取り、頷いた。
「仕事が終わったら行く。もしかしたら残業が入るかもしれないが、八時には行けると思うから」
「分かりました。お待ちしています」
そう言って利人は休憩室を出て行った。
終始、固まった笑顔で。
「でも…そうさせたのは、オレ、か?」
呟きをもらし、メモを見る。
会社から三十分ほど先にある、住宅街の高級マンションの名前が書かれていた。
思わず苦笑してしまう。
「相変わらず、親に可愛がられてんだな」
利人の父親は日本人で、大企業をいくつも抱える華宮グループの会長。
母親はイギリス人のトップモデルで、一人息子の利人はそれこそ蝶よ花よと猫かわいがりされて育った。
おかげで成績優秀、容姿端麗、対人関係も良好に築ける立派な息子ができたワケか。
「でも、性格と好みに難があるよな」
仕事は本当に残業が入ってしまった。
それでも二時間で片付け、タクシーで利人のマンションへ向かった。
十階建ての高級マンションは一ヶ月の家賃だけで、オレの一ヶ月分の給料が吹っ飛ぶな。
苦笑しながら自動ドアを通り、中に入る。
しかしもう一枚のドアが、オレの行く手を遮る。
ここから先は住人と、住人の関係者しか入れなくなっている。
オレは上着のポケットから、昼間受け取ったメモを取り出した。
住所が書かれたメモには、ケータイの電話番号もあった。
マンションは厳重なオートロック式、インターホンを鳴らすという選択もあったが、オレは自分のケータイから電話をかけた。
『はい』
「志野原雅夜だ。今、お前のマンションの下にいる」
『ロックを解きます。入ってきてください』
「分かった」
カチャッと何かが外れた音がした。
ドアの前に行くと、自動で開く。
オレは深呼吸をして、前に進んだ。
メモを見ながら、エレベータに乗り込んだ。
目的の階を押し、静かなエレベータの中で、また心臓が痛むのを感じていた。
きっと、いや絶対に、十年前のことを言われる。
それは覚悟しとかなければならない。
いつも飲むより、苦く感じられた。
「…分かった。どこで話をする?」
「私のマンションに来てください」
そう言ってオレの腕を放し、胸ポケットからメモを取り出した。
「ここが私の新居です」
メモを受け取り、頷いた。
「仕事が終わったら行く。もしかしたら残業が入るかもしれないが、八時には行けると思うから」
「分かりました。お待ちしています」
そう言って利人は休憩室を出て行った。
終始、固まった笑顔で。
「でも…そうさせたのは、オレ、か?」
呟きをもらし、メモを見る。
会社から三十分ほど先にある、住宅街の高級マンションの名前が書かれていた。
思わず苦笑してしまう。
「相変わらず、親に可愛がられてんだな」
利人の父親は日本人で、大企業をいくつも抱える華宮グループの会長。
母親はイギリス人のトップモデルで、一人息子の利人はそれこそ蝶よ花よと猫かわいがりされて育った。
おかげで成績優秀、容姿端麗、対人関係も良好に築ける立派な息子ができたワケか。
「でも、性格と好みに難があるよな」
仕事は本当に残業が入ってしまった。
それでも二時間で片付け、タクシーで利人のマンションへ向かった。
十階建ての高級マンションは一ヶ月の家賃だけで、オレの一ヶ月分の給料が吹っ飛ぶな。
苦笑しながら自動ドアを通り、中に入る。
しかしもう一枚のドアが、オレの行く手を遮る。
ここから先は住人と、住人の関係者しか入れなくなっている。
オレは上着のポケットから、昼間受け取ったメモを取り出した。
住所が書かれたメモには、ケータイの電話番号もあった。
マンションは厳重なオートロック式、インターホンを鳴らすという選択もあったが、オレは自分のケータイから電話をかけた。
『はい』
「志野原雅夜だ。今、お前のマンションの下にいる」
『ロックを解きます。入ってきてください』
「分かった」
カチャッと何かが外れた音がした。
ドアの前に行くと、自動で開く。
オレは深呼吸をして、前に進んだ。
メモを見ながら、エレベータに乗り込んだ。
目的の階を押し、静かなエレベータの中で、また心臓が痛むのを感じていた。
きっと、いや絶対に、十年前のことを言われる。
それは覚悟しとかなければならない。