
オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第24章 災難は続く ――
本来なら今頃は、ディズニーランド行きの京葉線に
揺られているハズだった。
『―― あ、もしもしあや。ごめんっ!
太朗のアホが家の屋根から落ちて足の骨折った
って。せやからTDR行けんように
なってしもたぁ』
『何言うてんの! そんな事はどうでもええから
タロさに付いててあげな』
―― って事で。
どうせお気軽な独り身だし。
年始はみっちり自身のスキルアップに
充てるつもりでいた。
なのに!
『今夜アクエリオンで待ってる』
『 ――必ず来いよ』って、
各務さんの誘いをすっぽかしたら、
こともあろうに校長から直呼び出しがかかって。
まさか、教職者である校長とヤクザまがいの優男が
裏で繋がっていた、なんて、夢にも思わず。
一体何事やろ??と、呑気に出向いた学校の
応接室で私を待っていたのは
大林校長と各務のおっさん。
校長は私を室内へ迎え入れると
「それじゃ、後は頼みましたよ」と意味深な言葉を
各務さんへ残し、そそくさと出て行ってしまった。
「……俺は心の広い男のつもりだから、過ぎた事は
根に持たない主義だ」
はぁ、そうですか。
「しかし、約束をすっぽかされれば当然その理由が
気になる……昨夜はどうして来なかった?」
しっかり根に持ってるじゃん。
「でも、それで、わざわざ校長を通してまでの
呼び出しは度が過ぎてるんじゃないですか?」
彼はゆっくり立ち上がって、私がまだ佇んでいる
戸口へやって来た。
「ほんなら、直接学生会館へ行った方が
よかったか?」
いや、そんな事をされたらえらい騒ぎに
なってしまう。
この間送って貰った時だって。
次の日、お隣の美和ちゃんやルームメイト・咲夜
に冷やかされて大変だったんだから!
ただ存在してるというだけで、この男は
目立ちまくりなんだ。
