オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第29章 心が悲鳴をあげても
一旦ネガティブ思考に傾いてしまった心はどうにも
修復不可能で ――
絢音は陽がとっぷり暮れてしまうまで土手にいて、
夜の住宅街を彷徨い歩き、自販機で買った
缶ビールを浴びるほど飲んだ。
(よくも、まぁ、巡回中のおまわりに
補導されなかったものだ……)
気が付けば足は、あんなにも行きたくないと
愚痴っていた学校へ向いていて……
***** ***** *****
『おっ ―― ん~~?
あれ、ひょっとして、
この間リュウに紹介されたジョシコウセー
じゃね?』
バイクで並走中の仲間に尋ねたのは ――
竜二の走り屋仲間・左官屋の寛治(かんじ)
ちょうど学校と学生寮の中間辺りに位置する
道をバイクで流していた。
信号待ちで停まって、絢音に気がついたのだ。
「あららぁ~いいのかなぁ。かなり酔っ払ってる
みたい」
「確かにヤバそだな。一応リュウに知らせておくか」
結果的に彼のこの機転が絢音の命を救った。