オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第34章 3月31日
翌日、東京駅には利沙と勇人だけが見送りに来た。
他の元・クラスメイト達は今日が入社式や入学式・
入校式なので、涙を呑んで諦めたらしい。
「―― じゃ、これはボーディングパスな」
「ん……」
「で、こっちは、新幹線の中で食べて」
利沙は駅弁とペットボトルのお茶を手渡す。
受け取った絢音は、もうこれでお別れだと、
早くも涙ウルウル。
「っっ、―― んだよっ」
「今頃泣かないでよぉー」
「だって……今日の利沙と勇人、
やけに優しいんやもん……」
「なんだっソレ??」
「なにソレっ??」
「俺は(うちは)何時でも優しかったっしょ」
「ん……ホント、ありがと、ね……」
3人が立っている新幹線ホームに電車の
入線アナウンスが流れる。
と、何故か勇人が急にソワソワし出して、
利沙へ目配せし、わざとらしく咳払いをする。
「?? どうかしたのー? はやと」
「ん? い、いいや、べつに何も……」
と、絢音に見えない所で利沙の小腹の辺りを
軽く抓る。
「っっ ―― 分かったわよー。でも、早くしてよね」
と、ぶつくさ文句を言いつつホームにある
キヨスクに向かった。
「変な利沙……」
「ハハハ ―― ホントにそうだな」
変、といえば、勇人の方が利沙の2倍は変だ。