オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第7章 露呈、そして話し合いの席で ――
私は軽く深呼吸してから、
「――って」と呟いた。
その呟きはあまりに小さく聞き取れなかったので、
姉ちゃんは「え?」と聞き返してきた。
「……尻軽女救済の為に
アルバイトしてきた訳じゃない、
って――それに、そのお腹の子がボクの子供だって
証拠は何処にあるんだって……」
姉ちゃんは息を詰めた。
そして、ガコッという鈍い音に
その場の皆が凍あやねく。
(う……そ)
そこに立っていたのは仕事帰りの無表情な
千尋義兄さんだった。
私は思わず目を逸した。
彼の拳は壁にのめり込んでいる。
さっきのガコッという鈍い音は千尋義兄さんが
拳で壁を殴った音だった。
「!! ―― っ、あん野朗……やっぱりあの時、
去勢しとくんだった」
「きょ、去勢って千尋さん……」
「……すまん初音。相手の家族との話し合いには
俺も立ち会うが、それまでの段取りは頼む」
「はい……わかりました」
と、千尋義兄さんは自分の部屋へ下がった。
「お姉ちゃん……」
「大丈夫よ。―― ちょっと様子見てくるわね」
姉ちゃんも千尋義兄さんの後を追って行った。
私はこの先、自分がどうなるのか?
不安で堪らなかった。
「――って」と呟いた。
その呟きはあまりに小さく聞き取れなかったので、
姉ちゃんは「え?」と聞き返してきた。
「……尻軽女救済の為に
アルバイトしてきた訳じゃない、
って――それに、そのお腹の子がボクの子供だって
証拠は何処にあるんだって……」
姉ちゃんは息を詰めた。
そして、ガコッという鈍い音に
その場の皆が凍あやねく。
(う……そ)
そこに立っていたのは仕事帰りの無表情な
千尋義兄さんだった。
私は思わず目を逸した。
彼の拳は壁にのめり込んでいる。
さっきのガコッという鈍い音は千尋義兄さんが
拳で壁を殴った音だった。
「!! ―― っ、あん野朗……やっぱりあの時、
去勢しとくんだった」
「きょ、去勢って千尋さん……」
「……すまん初音。相手の家族との話し合いには
俺も立ち会うが、それまでの段取りは頼む」
「はい……わかりました」
と、千尋義兄さんは自分の部屋へ下がった。
「お姉ちゃん……」
「大丈夫よ。―― ちょっと様子見てくるわね」
姉ちゃんも千尋義兄さんの後を追って行った。
私はこの先、自分がどうなるのか?
不安で堪らなかった。