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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第7章 露呈、そして話し合いの席で ――

 
 裕の投げやりな態度に腹を立てた千尋義兄さんの
 気持ちは痛いほど分かるけど。
 
 あいつ自身は ”悪い事をした” なんて
 これっぽっちも思っていないのだから、仕方ない。
 
 でも、私が裕をたぶらかしたなんて、あんまりだ。
 
 
 一瞬にして、険悪になったこの場の雰囲気を
 さらに悪化させるようなスマホの着信音が虚しく
 鳴り響く。
 
 『失礼』と言って裕のお父さんが通話に出た。
 
 そして裕のお父さんはその通話が終わって
 おもむろに立ち上がり、
 
 
「緊急オペが入ったので失礼させて頂く。
 この後の事は顧問弁護士と話を進めて欲しい。
 京子、裕、行くぞ」
 
 
 自分の言いたい事だけをさっさと言い、
 返事も聞かずに出て行ってしまった。
 
 裕は ”助かったぁ”と、あからさまにほっとした
 表情を浮かべ、父親の後に続いた。
 
 ただ1人、小母さんだけがやって来た時と同じく
 平身低頭で何度も頭を下げ、出て行った。
 
 
「さぁ、絢音。疲れたでしょ。少しお部屋で
 休もうね」

「う、うん……」


 お母さんが絢音を連れ部屋から出て行った後、
 父は『飲むだろ?』と千尋に言い、
 初音は『じゃ、私はおつまみの用意を』と
 台所へ向かった。  

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