オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第9章 急転直下
「えっ、芳本先生いらっしゃらなんですか!?」
「ごめんねぇ、あやねちゃん。先生今日は教育委員会の
会合でお出かけになってるのよ」
その日は登校してすぐ、事務棟1階の学生課へ
やって来た。
退学届けを書いてから色々お世話になった芳本先生
にだけは挨拶をしに行こうと思っていたが、
事務員さんにそう告げられ項垂れた。
「それにしてもあやねちゃん、ホント辞めちゃうのねぇ。
寂しくなるわぁ」
事務員さんこと、金子さんは芳本先生と同い年で、
こんな私にもいつも良くしてくれた数少ない人だ。
「金子さんにもホントお世話になりっぱなしで。
ありがとうございました。金子さんだけですよ、
そんなふうに言ってくれるのは」
再度、お世話になりました、と頭を下げて学生課を
出た。
腹を括ってここまで来たけれど、拍子抜けだ。
芳本先生へのご挨拶は手紙で
済ませるしかないかな。
「―― あ、アキ達にも会っておこう」
今日は*曜日。
1~2限は体育だから、
きっともう更衣室にいるよね。
今、各学年別の更衣室は耐震工事中なので
全学年が体育館脇の同じ更衣室を使っているから、
時間がかぶる日はとても混む。