オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第9章 急転直下
鼓動がどくどくと大きく鳴る。
息が詰まる。
動かす足が徐々に早くなっていて、
つまづきそうになって足を止めた。
「馬鹿みたい……」
友達だと……親友だと思っていたのは
自分だけだった。
『私達は親友。ずっと絢音の味方だよ』
2人のその言葉を信じていたのに。
ふっ ―― と、乾いた笑みが零れた。
すると頬に暖かいものが伝う感覚がして、
手をそこにやる
と、涙が溢れていた。
「あ~……ほんと、何やってるんだろ」
自嘲の笑みを浮かべる。
『―― おぉ、グッドタイミング、絢音。そっちの用事は
終わったかー? 俺もさっきここ着いたとこ』
突然背後から肩を叩かれて弾けるように
振り向くと、目を丸くしたあつしと目が合った。
「ワ、ワオ。どした?! なに泣いてんだよ?」
「あっくん……私もやだ……
分かんないよ。私1人バカみたい」
あつしの胸板を叩きながら叫んだ。
悔しい、悲しい、苦しい……。
色々な感情が心の中で渦巻いて、無茶苦茶だった。
「……やっぱお前、東京に行った方がいいよ」
「……」
あつしが私の両肩を持ってそっと引き離した。
「行って、早いとこ元の自分取り戻してこい」
「……」