オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第11章 餌に釣られて焼き肉デート
私に見栄を張ってもしょうがないと思うけど?
店内に入ると、マネージャーらしい黒服が
ダサみに声を掛けた。
「各務様、いつもありがとうございます」
こんな高級店で常連なわけ?
教授か誰かと接待で一緒に来たのかな。
うん、多分そうだ。
個室に通されて、向き合って座る。
「何でも好きなのを選べ」
「んじゃ、遠慮なく ――」
とは言ったものの、こいつの懐具合も気になる。
ホントに良いのかぁ? お金あるのか?
「おぉ、じゃんじゃん 頼め」
大人って色々大変だ……と思った時、
扉が開いて店の人が入ってきた。
「各務様、本日はご来店ありがとうございます。
とても良い肉が入っておりますが……」
「じゃあ、それを貰おう。後は適当に頼むよ」
「はい。畏まりました」
ちょっと、ねぇっ!
うちに選ばせてくれるんやなかったん?
ナニ勝手に決めてんのよ!
ダサみが私を見た。
「どうせ食うなら美味い肉の方がいいだろ?」
「え?」
「『うちに選ばせろ』と顔に書いてある」
また、ダサみに笑われた。
明らかに高そうな霜降りや赤身の肉がテーブルに
並び、ダサみ自らが肉を焼き始めた。