
オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第11章 餌に釣られて焼き肉デート
―― あ、れ?
目が覚めて運転席を見るとダサみがいない。
しかも! ココって東京湾の中央埠頭じゃない?!
一瞬本当に拐われたと思ったが、ダサみは外で
タバコを吸っていただけ。
車のドアの開閉音で、ダサみは振り向いて
私に微笑んだ。
「よく眠れたか?」
「はぁ……」
「いつもは何時に起きるんだ?」
「ん~ ―― 大体4時半くらいかなぁ」
「早いな、俺は寝る時間だ……」
「あの、ダサ ――」
危うく”ダサみ”と、言いそうになって、
慌てて口をつぐんだ。
「ハハハ ―― ”ダサみ”ね、俺もかなりのアダ名
付けられたもんだ……」
あ、知ってたんだ……。
「―― そろそろ行こうか」
「はい」
ダサ ―― 改め、各務さんが助手席のドアを
開けてくれたので素直に助手席に座ると、
後部座席に置いていた私の荷物を笑いながら
取ってくれた。
「ありがとうございます……」
「そうやっていつも素直だと、めっちゃ可愛いよキミ」
「私は何時だって素直で可愛いです」
「アハハハ ―― こりゃ、負けた」
各務さんは笑いながら車を発進させた。
海岸通り*丁目の近くからナビをして
アパートの前まで送ってもらい、各務さんに
きちんと礼を言った。
「ありがとうございました、肉と送迎」
「いいえ~、仕事頑張って」
「はい、各務さんも」
私は少し笑った。
そして、車から降りてアパートに入る。
私が身構えていた以上に彼は悪い奴でも
なさそうだ。
