
オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第11章 餌に釣られて焼き肉デート
やばい! 東京湾に連れて行かれる!!!
勢い良く押し込まれたせいで後部座席に
投げ出された様な形になったが、すぐに体制を
整えてドアノブに手をかけた。
―― が、いち早く運転席に座ったダサみが
ドアロックをかけた。
「送ると言っただろ? 大人の言うことはちゃんと
聞くもんだよ? 学生さん?」
笑いながら私を見た。
「……」
仕方なく、無言で座席にもたれかかると、
それを確認してダサみが車を発進させた。
「芝浦、だったよね?」
「……はい」
「東京湾には連れて行かないから安心して?」
「え?」
私はダサみを見た。
「『私をどうするつもりだ』と顔に書いてある」
「……」
その笑った顔が、妙にムカつく。
「俺は、人の出会いは一期一会だと考えてる。
今朝キミに会ったのも、キミと俺が同じ学校だった
のも全て偶然ではない。キミに焼肉を奢ったのもね」
「はぁ……」
「たとえ偶然だったにしても、そんな出会いこそ
大切にしていかなきゃ勿体無いだろ?」
また笑いながら、ダサみはタバコに火をつけた。
車は首都高に入り、私は久しぶりに見た首都高
からの夜景を眺めていた。
胃が消化を始めて、車の心地良い振動と暖かさで
瞼が重くなってゆく……
でも! ここで寝てしまったら、
どこに連れて行かれるか分からない ―― って、
思うのに……
明日も早いなぁ……あ、利沙に**のレポート
返しておかなきゃ……
睡魔に負けて、私は目を瞑った。
