オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第12章 ある教師のボヤき
「―― これで美人の女性教諭でもいりゃあ、
少しはヤり甲斐も湧くってもんだが、既に女を捨てた
ようなオバサンしかいねぇし、保険医まで男ときてる
……あり得ねぇ、最悪」
「いいじゃないの、高校教師。ちょっと若いってだけで
女子生徒にモテモテだぜぇ。大体お前はいつも贅沢
なんだよ」
こいつは物心ついた頃からの腐れ縁で、かれこれ
30年越しの付き合いになる、日向英之。
この星蘭大学附属私立港南台高校の養護教諭。
「あんな小煩いのにモテても嬉しくない」
「だからお前は贅沢だっての。この広い世の中にゃな、
生まれてこのかた女っ気ゼロって侘びしい男も山と
いるんだぞ~」
「引く手も数多のお前がそれを言うか?」
「……けど、山ノ内達が言ってるヤンキー集団、
あいつらそんなややこしい連中でもないぞ」
「知ってるのか?」
「まぁな。喧嘩の怪我で割りとよくココに来るから。
手ぇかかるとしたら、和泉くらいじゃないかな」
「ちょっと待て、それって、3-Sの和泉絢音か?」
「おっ。さすが学年主席の可愛い女子はインプット
済みか。
何を隠そう彼女が連中のリーダー格だ。
”港南台の悪魔”って有名だぜぇ。
彼女が1度暴れ出すと ―― 辺りは一面、
血の海と化す! なぁんてな」
……マジかよ。
ってか、和泉はこの4月に転校して来た
ばかりだろ。
で、もう”港南台の悪魔”か?
こりゃ、えらい問題児押し付けられたもんだ……。
とりあえず、そいつらに当たりをつけない事には
始まらんかぁ……。