オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第13章 湘南台の悪魔
ドスッ、ボコッ、バキッ ――――
絢音の振り出した鋭いパンチと蹴りが、
小気味よく不良男子達の急所へクリーンヒットし、
その男子らは次々と折り重なるようにして
倒れ込んだ。
絢音は腕まくりに仁王立ちで勝ち誇った笑みを
浮かべ。
「まだヤる気ぃなら、いくらでも相手になるけど?」
男子らは意味不明の雄叫びを発し、
這々(ほうほう)の体で逃げ出して行った。
そんな絢音の後援隊よろしく片隅に控えていた
クラスメイトの蘇我3兄弟、長男・アキラ、
次男・学、三男・元が、
男子達の後ろ姿に向かって叫ぶ。
「恐れいったか?! どチンピラ」
「「このドラゴン和泉を舐めんなよぉぉっ!!」」
一方、竜二はあまり気は進まないが
一応上司からの言いつけなので
”当たりをつけないと ――”と、
とりあえず学校付近を適当に流していたら、
まさに今喧嘩直後らしい問題児達と遭遇した。
「お前ら性懲りもなくまた喧嘩か……」
「うっせーなっ」
「何もあんたに迷惑はかけてないでしょ」
「ま、そりゃそうだが……」
リーダー格とされる絢音は ――
滅法喧嘩が強い事を除けば見た目ごく普通の
女子高生だ。
喧嘩を目撃された各務の事など眼中なし
といった感じで、傍らに立つ男子・久住柾也を、
「行くよ」と促し立ち去ろうとする。
とっさに竜二は絢音の肩に手をかけ引き止めた。
「ちょっと待てよ、お前らこんなに毎日ケンカ三昧だと
そのうち ――」
「何です? 先生。もしかして、山ノ内辺りに
うちらの事もっと監視しとけとでも言われました?」
「げっ! なんで、もう知ってるんだ?」
と、口走ってしまってから”しまった!”と
口を塞いでも手遅れ。