オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第16章 喧嘩は趣味
「―― あ、ダサみだぁ」
「ちーっす」
絢音は今日もいつものように久住柾也と
連れ立っての下校だ。
「いいなぁ。もう、帰り?」
「バカ言え、リーマンはお前らの考えてる以上に
忙しいんだぞ」
「あぁ ―― そっか……うちらの見張りね。
大変ですねぇ。帰りは家まで送ってくれる?」
成り行きで、並んで歩き出す ――
「……俺、お前達の事は、喧嘩はもちろん
授業サボるわいじめも万引きも、
悪い事なら殺人と輪姦し以外の何でもありの
ヤンキー集団だと聞いたんだが」
「何それ、いくら何でも酷い言われようだこと」
「うちら万引きとかイジメみたいな卑怯な事は
絶対しないよ。親、泣かせたくないし」
(何だよ、ますますもって普通の生徒じゃん!)
「偉いな」
絢音は「へへ、そーお?」と言いながら、
はにかむように微笑んだ。
その笑みがあまりにもキラキラしていて、
不覚にも各務はドキリとしてしまう。
(こいつって、いい顔で笑うなぁ)
「でも、喧嘩はどうして止めない?」
「あぁ、アレ? アレは、しいて言うなら、数少ない
趣味だから」
「趣味、って……お前な、万が一それで大怪我
でも ――」
そう言っている所へ他校の不良くん登場!
「おいっ、いずみぃー、今日こそは白黒はっきり
決着つけさせてもらうぜ」
「和泉っ」
「ごめんセンセ、今は目ぇ瞑っといて?」
と、絢音はその不良くんの相手をしに行ってしまう。
「おいっ」