
オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第3章 私立・壬生四条高校
試合の結果は 10 - 3 で、相手チームの
圧倒的勝利で終わった。
監督からは
『コールドゲームにならなかっただけでも
大したもんだ』
等と、何とも締りのない慰めをかけられ、
後輩たちが引き払った後の部室に残った
キャプテン笙野他・3年生部員らは
なんとも言えない虚無感に包まれ、意気消沈。
今まで、特にコレといった自慢の戦績は挙げられ
なかったが、引退試合くらいは! と、
結構意気込んでいたのだ。
キャプテンとして後輩達の健闘を称え、
喝を入れてから帰路に着く。
通学路の途中にある小さな公園に絢音が
待っていて ――。
「―― あ、先に帰ってても良かったのに」
「あ、やっぱり、迷惑だった?」
「いいや、とんでもない……じゃ、帰ろっか」
「うん」
2人(絢音と裕)は、並んで歩き出した。
「あ、えっと……試合、残念だったね」
「ん、あぁ、まぁ、な ―― 最後くらいは、
カッコよくキメて、ほら ”有終の美” ってやつ?
飾りたかったけど、今のあいつらじゃアレが限界
だったのかも知れない」
「そっかぁ……けど、皆んな頑張ったよ」
こうやって、今日あった出来事とかの事を中心に
話しながら数分歩いていると、先に和泉家に
到着する。
彼の自宅はここから1キロほど先にある、
新興住宅街の大きなお屋敷だ。
