テキストサイズ

夜の影

第23章 half brother

【智side】

バーガー屋の2階は今日も学生で溢れてて、店に入った後でクラスメートに会ったらヤバイな、と気がついた。

それぞれ別に注文して、トレーを手に階段を登って来たんだけど、オイラは人差し指を立てて3階まで行くよ、って二宮カズナリに示す。
頷いただけで文句も言わずについて来た。

3階だと喫煙席だから、制服姿の学生は殆ど居ない。

「で? 話って何?」

店員の目が届かないのを良いことに、オイラは店から持って来たコンビニ仕様のカラアゲもトレーに出して食事を始めた。

一人になってからというもの、ご飯の支度が面倒で。食べないことも多い。

「あの……お母さんが亡くなったんですよね?」

「うん。それが?」

即答したら、思いのほか言葉が強く聞こえたらしく、二宮カズナリは一瞬驚いたような顔をしてから、パッと視線を下に向けた。

沈黙が続く間、一人だけ食べてるオイラの手元で、バーガーを包んでる紙がガサゴソいう音が響いてる。

一応ウチのかーちゃんは、何て言うの? 
愛人的な?
いや、かーちゃんと付き合ってた頃はまだ父親は独身だった筈だから、この場合どうなんの?
コイツのお母さんが婚約者だろ? じゃぁ浮気相手?

「わかんねぇな……」

呟いた声が聴こえたらしくて、上目遣いにオイラを見てくる。

「あのさ……ウチのかーちゃんがお前のお母さんに酷いことをしたのは謝るよ。
そんで、俺が居るのも申し訳ないと思ってる。ごめんな。
けど、認知もされてないし、今までもこれからも俺はそっちの家には関わらないから。
迷惑になるようなことは絶対にしない、って約束する。
……それでも許せない、って言われると、俺としても、ちょっと困るけどさ」

遠回しに言っても仕方ないと思ったから、ありのままに言った。
二宮カズナリは物凄くビックリしてるように見える。
オイラは先に食べ終わった包み紙をぐしゃぐしゃと丸めた。


「俺んち、家族みんな死んじゃって謝れるのも俺しか居ないんだよ。
ウチのかーちゃんがお前のお母さんとお前のことを傷つけて、申し訳ない。
許してくれとは言わないけど、それでどうすればいいの?」

「……えっ?」

「だから、なんか責任取れとかそういうことで来たんでしょ?
お前のお母さんに謝りに行けばいい?」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ