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夜の影

第40章 恋

【智side】

オイラが生まれて初めて本気で好きになった人は、この時既に病に罹っていて、数年後、若いまま向こうへ行ってしまったけど。

それに、この恋は結局実らなかったけれど。

それでも俺にとっては物凄く幸せな瞬間だった。

青白く染まった雪。
シンと静まり返った夜の公園で、ほんの僅かだけ会えた幼馴染。
子供時代から10年以上も経って、オイラ達はやっと大好きな人に迎えに来てもらった。

あの日のこと、俺は一生忘れない。

あれからアイツとは半年ぐらい一緒に暮らした。
でもそれはまた別の話だ。

想いを隠せなくなって、気持ちを伝えても受け入れてもらえなくて。
どうしても繋がっていたかったから、結局俺は暁の玉になることを選んだ。

何でこんな男を愛してしまったのか、って自棄になって遊び歩いた日々。
大人になるに従って、出会った頃のように純粋に甘えることは出来なくなった。

玉になってからは抱かれることもなくなったし。

断ち切ることも出来ず、ズルズルと仕事を受けて。
それも辛くなってきた頃に翔に会った。

やっと理解したアイツの気持ち。

真実は語らないまま鬼籍に入ってしまったから、想像でしかないけれど。
俺はちゃんと大切にされてたと信じてる。

今でも東京に雪が降る夜には、あの晩のことを思い出すこともある。
けど、好きすぎて苦しかった気持ちや、一方通行の想いが辛かった記憶はもう遠い。

出会いを後悔したことはない。
家族を亡くして一番しんどかった時に、抱きしめて支えてくれた。

望んだ形の愛ではなかったけれど、愛してもらってたのが解ったし、一番純粋だった頃の自分でアイツを好きになれて良かったと思っている。

俺が初めて好きになった人。

忘れない。





夜の影Beginning FIN.




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