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my destiny

第13章 光って輝く場所

【智side】

いただいた甘酒はとても美味しくて、冷えてた体が中からじんわりと温まるようだった。

雲が晴れて、助手席にいると日差しが眩しい。

車に乗ってからずっと、運転してる翔君の左手とオイラの右手は繋がったままで。
この感じ、気持ちいいなぁ、と思って、何となく黙ってた。

一緒に居るから、何も心配いらない。

「あと30分ぐらいで着いちゃうけど、
寝ててもいいよ」

「ん…だいじょぶ…」

ほんとは景色とかも、ちゃんと見たいんだけど。
オイラはシートに体を預けたまま、首だけ右に向けて、翔君の横顔を見てる。

正面を向いてるとまぶしくて。

あったかいし…。

やっぱり寝てないから、まぶたがくっつきそう。
体が凄いぽかぽかするけど、寝たらもったいない。

翔君がチラッとこっちを見て、面白そうに笑った。

「ん~?」

「何でもないよ(笑)
ちょっとだけ目ぇつぶってみて?」

「…ん…」

なんだろ、と思いながら目を閉じる。

チコチコとウインカーの音がして、車が止まった。

繋いでた手が解ける。

あ。

翔君が一瞬だけ覆いかぶさって来て、シートが倒された。

離れないで。

と、思ったけど、もう目が開かない。

抱き合いたいのにな…。

「…帰ったらね」

ふふっ。
オイラの心の声、聞こえたのかな。

上着を掛けてくれて。

翔君の匂いがする。

短い キ ス が降って来て、嬉しいな、って思って…。

そしたらまた寝ちゃったみたいで、記憶が途切れて。

次に目を開けたら、目的地に着いたところだった。



翔君は、異様に広い駐車場の奥の方に車を停めた。

俺たちが乗ってる車だけ、ポツンとはじっこにいる。

「ここ…って、もしかして…」

「うん」

フロントガラスから見える建物が、太陽の光を反射して光ってる。

「寒いから、車の中から見るだけにする?」

「う、ん…」

寝呆けてはっきりしない頭のままで、ぼーっと眺める。

「見学もできるみたいなんだけど」

言いながら手を繋いでくれたから、力が入らない手でキュッと握った。

いろいろ思い出す。

いろいろ、思い出す。








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