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甘い鎖 ~アイツの愛という名の鎖に、縛られ続けたオレは……~

第4章 家の中の二人

「…オレはヤダ」

むつくれた顔でそっぽを向いたオレの背中を、光雅は抱き締めた。

「ボクは凄く嬉しい。綾と一緒にいることが、何より楽しいことだから」

「何で…オレなんだよ?」

疑問に思い、振り返ったオレの唇に、光雅はキスをした。

「えっ…」

「だって綾は他の人とは違う。ちゃんとボクを見てくれるし、向き合ってもくれるから。相手をしてくれるから、大好きなんだ」

その時、オレははじめて光雅の感情を知った。

いついかなる時だって、光雅はオレを優先してきた。

それはウチの両親のせいだと思っていたけど、本当は違っていたんだ。

「他の人はボクの容姿とか、成績を通じて見てくる。そんなの嬉しくもなんとも無いのにね」

…いや、苦笑しながら同意を求められても困る。

オレには全く身に覚えの無いことだから。

「でもボクは綾だけで良い。綾さえいてくれれば、後はどうだって良いんだ」

切ない告白をしながら、強く抱き締めてきた。

―あの時、嫌がることも出来た。

けれどオレは抵抗しなかったんだ。

その告白を、嬉しいと思ってしまったから…。

「だから綾、キミもボクだけを見て」

「光雅…」

「キミがボクだけを見るようにしてみせるから。そうせざるおえなくしてみせる」

力強く言い放った言葉に、不安が過ぎった。

今現在を思えばそれは予感だったんだろう。

それでもオレは、光雅を拒まなかった。

再び近付いてくる唇を、目を閉じて受け入れた。

あの時からこうなることは分かっていた。

分かっていて光雅を受け入れたんだから、オレは自虐趣味でもあるんだろうか?

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