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でも、愛してる 「改訂版」

第1章 でも、愛してる 「改訂版」

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 そうなのだ。
 清は、いつも「楽しいことがあった?」と聞く。
 わたしだけでなく、経営している塾の子どもたちにも聞く。
 「楽しいことが一番」というのが、彼の口癖だ。
 楽しいことをみつけるような生き方をすれば、少しくらい嫌なことがあっても、のりこえられるというのが、彼の考え方なのだ。
 わたしも、その考え方はいいなと思っている。
 それも、わたしが、清を好きな理由の一つだ。
 「うん、楽しかったよ。
  教授がね、
  わたしの試験を褒めてくれたわ」
 「えっ、テストがあったの?」
 「ううん。
  試しの実験。
  院生は、
  実験をやらされることが多いの」
 「そうか。
  でも、褒めてもらえてよかったね」
 「試験は、
  すこし大胆な発想がいるから、
  失敗が多くて、
  褒められることはあまりないの」
 「大胆?」
 「うん。
  試験のときは、
  大胆さが優先かな」
 「そういうことか」

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