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明日への扉 ~~ 伝えたい気持ち

第6章 その夜


『あ ―― あぁ……ごめんな、その……』

「判りました。わざわざありがとうございます。
 今後は皇紀さんにも左門さんにも夏鈴にも
 迷惑かけないように気を付けますから」

『いや、あの……電話は夏鈴に言われたからばっか
 じゃないから』

「大丈夫です」

『……あのさユーリ。そんなに自分の事、追い詰め
 なくていいからさ』

「え ―― っ?」

『言い方、キツかったらごめん。でも嫌いで色々言って
 んじゃないし、俺、別に言葉以上の含みとか何も
 ないし。仕事、良く頑張ってくれてるの判ってるよ。
 礼儀正しいし・キチンとしてるし、偉いなって』

「そんな……」

『ただ ―― 時々変に萎縮してるからさ、もう少し
 伸び伸びすればいいと思ったんだけどさ。言い方
 悪かったかなって。だから……ごめんね』

「あ、あの ―― 電話、ありがとうございました」

『あぁ ―― それじゃあ、また』


 ―― 私の事なんか、放っておけばいいのに。

 皇紀さんは、どうしてこんな電話を掛けてきたん
 だろ。

 どうして、こんな私を気遣うみたいな言葉を
 掛けてくれたんだろ……。

 心ではそう思っていたのに、口をついて出たのは
 まるで逆の言葉で ――
 何だか、急に恥ずかしくなってしまう。

 『そんなに自分の事、追い詰めなくていいからさ』

 『礼儀正しいし・キチンとしてるし、偉いなって』

  
 カラダ、休めなきゃ。
 ホントは皇紀さんの少し笑ったような声と、
 初めて貰った厚意的な事がとても嬉しかったのだ。

 ひとりの部屋で何度も何度も繰り返し思い出して
 いる自分がバカみたいだと思うのに、どうしても
 繰り返してしまう……。

 皇紀さんの優しい声を聴いたおかげか?
 伯母さんと話して荒ぶった心もいつの間にか
 穏やかになっていた。
 今夜は何だか、とても寝付けそうにない。
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