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たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―

第2章 佐倉武



「ところで、武ママの笑い声が一階まで聴こえてたけど、何がおかしかったの?」

「くぷぷっ! このコったらねぇ……夏風邪を引いたのよぉー」

「えっ? 夏風邪ぇー!?」


 実果留は、俺を見ながら声をあげた。


「そうなの。だから『こんな時期に引くなんてバカよねー』って笑ってたところなの」

「っ、たくっ! だから昨日『ちゃんと拭きなよ』って言ったのに! びしょ濡れのまま、クーラーの効いてる電車に乗ったりするから! バカッ!」

「おいおい。今度は説教かよ。勘弁してくれよー……」


 風邪でも容赦なく、俺を叱り飛ばしてくるし。


「まぁ、期末の後で良かったね。明日から土日で休みだし、ちょうど良かったじゃん」

「あぁ……というわけだから俺、今日学校休むわ」

「了・解」


 はぁーあ。

 今日は、実果留と一緒にいられねぇのか……。


「じゃあ実果留ちゃん。私は下に降りるから、良かったら時間まで武を見舞っててくれる? バカの風邪、移らないようにね」

「アハハッ! はーい」

「武ちゃーん。あとで、母の愛がこもった美味しーいおかゆ、作ってあげるからねー」

「いらんわっ!」


 うっ……あんまり声を出すと、頭に響く……。

 おふくろは、鼻唄を歌いながら部屋を出ていった。

 たくっ、病人をいじりすぎだっつーのっ。あのオバンっ。


「にしても……武、辛そうだね」


 ここでやっと実果留が心配する素振りを見せ、机の椅子を引っ張ってベッドのそばに座った。


「あぁ……何せ、38度9分だからなー」

「えーっ!? そんなにあるのぉ!? それってヤバいじゃんっ。どれどれ?」


 うっ! 実果留の手が、俺のおでこにっ……。

 風邪のせいか、こんな普通の行為でさえ無性にドキドキするって……

 これは、理性まで弱まってるっぽい。


 いろんな意味で、ヤバいぞ。


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