たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第3章 杉並実果留
*
(お前さ……いつまで苦しそうな顔をしてんだよ)
(無理してつき合ってんの、バレバレ)
(そんなに別れたいなら、別れればいいだろ)
……武……。
朝の武が、ずっと頭から離れない……
「実果留ってばーっ。そこ邪魔ーっ」
はっ!
気づいたら私は、T字のホウキを持ったまま、教室のど真ん中で突っ立っていた。
『邪魔』と言ったのは、一緒の掃除当番の友達。モップを片手に困り顔。
「あ、ごめんごめんっ。急いで掃(は)くから待っててっ」
私ってば……。
言葉どおり、急いでホウキで掃こうとした……けど、
「もういいってばぁー。そんなに何回もおんなじとこばっか掃かなくてもー」
「……え? あ……そう……だっけ?」
「そうだよー。それに、掃き掃除はすでに他の人が終わらせたんだよ? そんなことにも気づかなかったのぉ?」
「うそ……ご、ごめんっ……」
周りを見渡すと……本当だ。
T字のホウキを持っているのは私だけで、他のみんなは私の周辺を避けながらモップ掛けをしていた。
「実果留ー。今日のあんたはダメダメ過ぎー。
英語の授業なのに、国語の教科書出しててさー。先生に当てられても、気づかないでそれを読んじゃうし。
体育でサッカーしてる時も、味方側にゴールしちゃうし。それに――」
「もーう、わかりましたぁ。ごめんなさいってばぁー」
おっしゃるとおり。今日の私はダメダメ。
私が止めなかったら、友達はあと9個ダメダメをあげてた。つまり私のダメダメは、今の掃除のことを含めて、全部で12個もあったりする。
「実果留、学校に行く前に武の様子を見に行ったんでしょ?」
「うっ、うん……」
うぅ……今は、武の名前がちょっと出ただけでも涙が出そう。
「だからさ、きっと風邪でも移ったんだよー。顔もちょっと赤いし」
顔が赤いのは、泣きそうになってるのをずーっと堪えてるからだと思う。
でも私は、本音を隠して「そうかもしれない」と話を合わせた。