テキストサイズ

ヌードモデルの軌跡──詩織の中学生時代

第1章 芸術を理解するために


その日の美術の授業は人物画の基礎、クロッキーの実習だった。

二人の男子が上半身裸で、背中合わせにした椅子に座り5分間静止してモデルをつとめた。

クロッキーはスピードが命だから、5分で交代とするのは妥当だった。

2ターン目が終わったところで、思いがけないことが起きた。
女子がモデルを志願したのだ。

みんな冗談だと思ったが、そうではなかった。

その女子はミナコといって、絵が上手かった。
学校近辺で目撃した変質者を絵にしたのが検挙につながった──というエピソードだけで説明は十分だろう。

あっという間にミナコはセーラー服の上を脱いでしまった。
ブラジャーは着けていなかった。

当時のテレビは普通のドラマで女性の乳首を映していた。

美術の教科書にも裸婦画は載っていた。

それでも、生身の女性の乳房は、家族のものでも滅多に見ることはなかっただろう。

女子だって、スクール水着に着替えるときか、修学旅行の入浴時間ぐらいしか、クラスメイトの裸の胸を見ることはない。

男子もいるなかで、ある程度の時間自発的に公開された乳房は、きわめて異例だった。
しかも、目に焼きつけるだけでなく、クロッキー帳に残していいのだ。

いつも胸が大きい子をひやかし、普段はおっぱいを見たくてたまらない男子が、
いざ公然と見ていいとなると、目のやり場に困っていた。
でも、それも最初だけ。
またとないチャンスはきっちり活かし、ちゃんと絵を完成させていたようだ。

不公平がないように、ミナコは反対側の椅子にも移ってくれたので、
中学生なりの過不足ない大きさの乳房が、私からもしっかり観察できた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ