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愛は、メロディにのって 「改訂版」

第1章 愛は、メロディにのって

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 でも、鍵盤を押さえる練習だけはしてくださいと言うと、
 「はい」
 「いつから始めますか」
 「次の水曜日でいいでしょうか」
 「はい」
 「私、滝川望といいます
  学習塾を経営しています」
 「わたしは
  宮本百合です」
 「よろしくお願いします」
 「こちらこそ
  弾けるように
  精一杯お手伝いします」
 望さんは、あまり熱心な生徒さんでは、ありませんでした。
 仕事柄、忙しいと言っていたので、しかたないことです。
 でも、音楽が好きだということは、わかりました。
 それも、チャイコフスキーやワルツなど、メロディのきれいな曲が好きだと言いました。
 わたしと望さんは、いろいろ話しているうちに、その他の曲も音楽以外でも、好きなものが一緒というのが多いのがわかりました。
 そんなある水曜日、小学三年生のなつみちゃんが怪我をしました。
 よそ見をしていてピアノの蓋を閉じたので、指を挟んでしまったのです。
 ウワーンと泣き声がしたので見ると、なつみちゃんの左手から血が床に垂れています。

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