兄弟ですが、血の繋がりはありません!
第4章 夏の暑い日は溶けていればよし
悠side
「あ"〜!!もぅ、あっづい!!」
8月も後半、家に響くのはそんな声ばかり。
「鶫くん、うるさい。あと床で寝ないで邪魔」
「暑さのせいかいつもより弟が辛辣!」
なぜこんなにも暑いか、というと。
年々深刻化している地球温暖化の影響…だけではなく、我が家に2台しかないエアコンの1つがつい昨日動かなくなったのだ。
「なんで今?!汗やっばいんだけど!」
「修理のおじさん明日の夕方にくるって」
「・・・ダメだ、オレもう溶けちゃう。ごめんねハルル…お兄ちゃんの先立つ不幸を許して…」
「縁起でもないこと言うな」
「イッたい…!暴力反対!」
馬鹿なことしか言わない兄の尻を思いっきり蹴った。…ちょっと動いただけで本当に汗が止まらないな。
「智にぃの部屋ならエアコン付いてるじゃん」
「あそこはダメだ…頭クラクラするもん…」
「たしかに」
この時期の智にぃは夏の課題に追われていて、部屋には絵具の臭いが充満。窓を開けてエアコンを付けている状態だ。
「なんか涼しいこと出来ないかなぁ」
急に起き上がった鶫くん、ぺたぺたと足音をさせキッチンへ向かった。
「アイスならないよ」
「・・・え?」
「何その顔、怖い」
人は本当に絶望した時はこんな顔をするんだ、なんてやけに冷静に見てしまった。すると今度は鶫くんの頬を幾つもの涙が伝った。
「泣くほど?!」
「だって〜アイスも買えないなんてっ家はそんなに貧乏なの?オレ高校やめて働いた方がいい?」
アイスが無いだけで何故そんな話に。
「いいよ、働かなくて。つーか、アイスがないのは暑くて食欲ない〜って智にぃと鶫くんが馬鹿みたいに食べちゃったからだし」
「オレそんなに食べてないっ 」
「ミルクバー箱の全部食べたの鶫くんだよ?」
「そっれはそうだけど・・・ソーダのやつはオレ1本も食べてないもんねー!」
「そっちは智にぃが全部食べた」
全くうちの兄共はどうしてこうも・・・
ってゆうか、俺1個も食べてないじゃん!
「アイスもないんじゃ、いよいよヤバい…
今年の夏は何も食べられるものが無い!」
「鶫くんは何だかんだ食べてるでしょ。問題は智にぃだよ。毎年夏痩せしてるけど今年は目に見えて酷い」
「大丈夫だよ〜秋にはいつも戻るし…」
「食べさせなきゃ、何か美味しいもの、食べさせなきゃ!」