兄弟ですが、血の繋がりはありません!
第6章 愛を知らない長男は
智希side
「大丈夫!なめんなよっオレ絶対兄さんより長生きするから、兄さんのこと置いていかないから!」
ザァッと庭の木が風に揺れた。
こんなこと初めて言われた。
心臓がうるさいくらい跳ね上がって、でも、苦しくなくて、温かい。
俺がずっと欲しかった言葉だったんだ。
覚えてないけど覚えてる。母ちゃんが死んだ時。冷たすぎる手に触れて、幼すぎる頭が生きていないことを悟った。
父ちゃんが死んだ時。雨の中で目を覆いたくなるような光景を見つめながら、唇を噛んで涙を堪えた。
次は誰が居なくなるの、と思いながら。
本当はその言葉が欲しかった。
置いていかないよって、1人にしないよって。
「う、っひっく…うわぁあぁあぁああぁあっ」
叫びと涙が止まらなかった。
…あの時も、あの時も、泣かなかったのに。
「兄さん」
鶫の手が俺の手を引いて、立ち上がった所を抱きしめられた。
「…にぃ・・・智希、」
「っ」
鶫には俺の中身がまだあの頃の、5歳のままであると見えているのだろうか。
初めて鶫に名前で呼ばれたのに、その感覚は薄く、酷く安心した。
俺は変われるだろうか。
鶫に言われたように少しずつでも、誰かを正面から愛せるようになれるだろうか。
今は家族だけだとしても、いつか自分の家庭を持ちたいと思うその時に。
生涯愛せる人を見つけられるだろうか。
密かに楽しみだ。
だって、
俺は、初めて、1人ではなくなったのだから。
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