兄弟ですが、血の繋がりはありません!
第9章 未来なんて不確かなものを見る
鶫side
受験。
進学校の3年生なんてそれしか頭にないと言っても過言ではない。オレを除いて。
「鶫、お前結局第1志望どこ大にしたんだよ」
「ん、トーダイ」
「マジか。学科どこよ」
「決めてない」
「嘘だろ、もう秋終わるけど」
「担任にもせっつかれてる」
本当は。それだけじゃない。どこの学科にする、それよりも大事なことを決めかねているのだ。
それは、
「やっぱ受験やめようかな」
酷く初めの、根本的な部分。受けるか、受けないかだ。
***
勉強は、好きでも嫌いでもない。
ただ、分からないというのがイヤで分かるまで突き詰めたところそこそこの頭だった。小学校までは。
それからは、家族が知っている通り必死になって勉強してやっと身につけて来たものたちだった。その姿はけして学校では見せなかったけど。
そう考えたら、もういいかな。って思ってしまった。高校3年ここに来て大学に進むこと、勉強することをもうしなくてもいいんじゃないかと思ってしまったのだ。
それに、オレが進学しなければその分のお金を他のこと主に悠のこれからに使ってやれる。
それも、というかそれが、1番オレが嬉しい形なのではないか。
「でも、言えねぇ~!」
ズコッ!とパックジュースの最後を吸い上げる。
父ちゃんや母ちゃんになんて言えばいいのか。
A「もう勉強はしたくないんだ!」
→《母》鶫は好きことには一直線になれるんだから、頭のいい大学じゃなくても、好きなことが出来る大学でも専門学校でも行けば良いんじゃない?
《父》そうだな、父さんもそう思う!
B「悠に良い高校・大学に行って欲しくて…」
→《母》お金なら大丈夫。なんの為に家に帰らず仕事してると思ってるの。舐めんな。
《父》ことり程じゃないけど父さんも稼いでるから心配すんな~。
C「働きたいんです!」
→《母》アルバイトじゃだめなの?
《父》大学生はいいぞ!大人じゃないけど高校生の比じゃないくらい自由はある、最高の4年間を捨てるな!
・・・どれを選んでも撃沈。
そして思い出す。そういえば兄さんも最初の頃は進学しないで働くって言ってたな、最終的になんで進学したんだっけ・・・。
記憶を辿ってあったのは
『ふざけんな、大学行け!
俺にはお前を立派に社会に出す責任があるんだよ』
父ちゃんの重い言葉と拳が1発。
うんやば。