ホントノ私ハ、此処ニイル
第1章 第1話
そう思いながらひらりとその手に証書を渡すと、安堵の表情を見せた加賀美くん。
「見つけてくださったんですか。ありがとうございます」
通常ならそんな書類の混同などおよそ有り得ない話なのに、それすら判断できないほど高揚してしまったみたいだね。
彼女は、まるでしつけの後に満足げな微笑みを浮かべるごとくによろこんでいた。
「さ、そろそろ私達も行かないと」
「あ、そうですね。すみません、次長に付き合わせてしまって」
「まったくだ……なんてね」
「あ、ひどい。ふふふ」