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天気師の少年

第1章 ホームレス始めます

高校卒業と共に風海(かざみ)は家を出てホームレスになった。

当面の軍資金ならある。

大学を落ちて浪人になった風海にしっかり勉強しろと予備校等の資金として父親が投げつけるように置いていった数十万円の大金を持ち逃げしたのだ。

父親は風海のことには興味がなく何でもカネで片付けようとして、自分は愛人たちの家を泊まり歩いて滅多に帰ってもこない。
一応会社の社長で大金持ちなのだが、その会社は悪徳と評判されている。

父親がそんなでは母親が可哀相と思うかも知れないが、母親は母親で父親が帰ってこないのをいいことに毎日代わる代わる違う男を家に連れ込んではよろしくヤッている。

そんな家庭環境ではまともな受験勉強なんてできるワケもないから大学は落ちてしまった。

こんな家庭環境では家出をしてホームレスになった方がマシと思っても仕方ないことだが、悪いことは重なる。

こんな劣悪な家庭の中で風海が唯一心を通わせていた愛犬が亡くなった。幼稚園の頃に子犬で買った犬なので天寿を全うしたのであるが、幼い頃から一緒にいてくれた愛犬の死はあまりにも悲し過ぎる。

平成の時代、愛犬の死が少年による凶悪な殺人事件の引き金になったこともある。

それなのに父親は面倒そうに葬儀は豪華にして好きな犬を買えとカネを叩きつけた。
葬儀は豪華にしたが、新しい犬を買う気分にはなれずそのカネも所持したままである。

また、風海はついに童貞のままに高校卒業を迎えてしまった。
平成の頃から性の乱れ、性の低年齢化と言われ続けているが、ご多分に漏れず風海の回りでも友人たちが次々と初体験を迎えたりしていた。

どちらかというと奥手で女のコを誘ったりするのが不得手の風海は、早くカノジョが欲しい、初体験をしたいと日々懇願しつつもついに童貞を卒業することなく高校の卒業式を迎えてしまった。

一時期は死んでしまいたいとも思って、今でも死んでしまいたいという気持ちはあるが、死ぬのは怖いしイヤだという臆病な気持ちの方が勝って死んでしまうことも出来ずにいた。

こんな臆病で中途半端な情けない男だから初体験なんてできなかったんだと思うと本当に自己嫌悪である。

友だちとかの顔を見ると、アイツはヤッたのかとか、あの娘はもう経験済なのかとか、そんなことばかり考えてしまって、そんな自分が本当にイヤだし、悲しくて惨めである。

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