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天気師の少年

第5章 さようなら

「しょうがないだろ、ここには男が好きなお客さんばかりなんだから」

そんなふたりのやりとりもみんなを楽しませた。

寮に戻ると音が漏れないように声は抑えて布団を被って静かに愛し合った。
事が終わって裸のまま雨藍は風海の腕枕に気持ちよさそうにしている。

「ずっとこんなふうに穏やかで平和で優しい日が続くといいな・・」

「続くよ、ずっと一緒にいようね」

雨藍は風海の胸に頬を埋めて安らかに眠った。

だが、そんな願いは叶わなかった。

地球史上最大の台風が日本に近づいてきた。
この街に直撃して上陸するという。
それはもはや台風というレベルではなく、過去に甚大な被害をもたらした超大型台風の比ではなくこの街わ中心に殆どの街が水没してしまう程の恐ろしいものだった。

このままではみんな死んでしまう。
風海は自分の持てる力を全て使って地球史上最大の台風を消す覚悟をした。

「やめて、そんなことをしたら風海が消えちゃう」

雨藍は涙を流して風海が力を使うのを思い止まらせようとする。

「やらなきゃみんな死んじゃうんだ。だったら消えるのはボクだけでいい」

風海は雨藍に口を近づけて舌を絡ませる激しいキスをした。別れのキス。

「消えたらね、風になるような気がするんだ。風になって吹き渡りながら雨藍の音楽を聴きたいな。だからがんばってビッグなアーティストになってステキな音楽を届けてよ」

「風海~」

雨藍は大粒の涙を流して泣いた。
マスターや客たちも涙を流して風海を見守っている。

「みんな、ありがとう。ボクは風になってみんなの近くにいるから」

風海の姿が段々と薄くなっていく。そしてついに完全に見えなくなった。

地球史上最大の台風はまるで嘘のように消滅してキレイな青空が戻ってきた。

人々は歓喜したが、風海がその身を犠牲にして日本を救ったことは雨藍たちの他は誰も知らない。
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