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時計じかけのアンブレラ

第6章 花火 2019

会見から約半年。

今夏の俺達は、大きなチャリティー番組を目前に、控えめに言っても忙しい。
5人ともがずっと抑制のきいた高揚感と心身の程良い緊張を維持している。

周知の通り、俺は忙しいのは苦にならない。
と言うか、むしろ好きだ。
目の前の仕事を一つ一つ誠実に、確実に仕上げていく作業に没頭していると、安心できる。
ワーカホリックの自覚は当然あるが…。
これから2020年末までは、踏ん張りどころだ。
考える暇など必要ない。

仕事が詰まると、必然的に智君と一緒に居る時間が減ってしまうのがアレだけど。
あの人が笑っているから。

抱き合う暇もなく寝顔しか見られない日々が続いていても、5人の仕事で会う度に智君の気力が徐々に充実していく姿を見ているのは嬉しかった。

24時間の本番前に二人きりで過ごす時間が欲しくて、スケジュールを無理に調整した今日。
久しぶりに俺の部屋に来てくれた智君は、船の仕事でこんがりと焦げている。
先に戻って俺の帰宅を待っててくれたから、シャワー後で前髪が下りていた。

「お待たせ~
ビール、ビール~」

俺もソッコーで風呂から出て戻ると、ソファセットのテーブルにビールと食事の用意がされている。
いつものように二人並んで床のラグに直接座り、お疲れ~と乾杯した。

「か~、ウマいっ!」

俺を見てふふっ、と笑った智君は今日もふにゃふにゃしてて、全くもって可愛い。

「貴方、今朝は早かったんでしょ?平気?」

自分のビールから智君のグラスに注いでやると、ん~、と曖昧な返事がある。

「しょおくん、また痩せたでしょ?
そっちこそ平気?」

「俺は好きで忙しくしてるんだからいいんだよ
いただきまーす」

「ん…」

智君が作ってくれてたアテは蛸と胡瓜の例のヤツ。
大きめに切ってあるそれを口に入れると、わさびの辛さと共に胡瓜そのものが放つ青い香りが爽やかで美味い。
家から持って来てくれたカレーもあるし。

「うんま~」

幸せを噛みしめてたら心配そうな声がした。

「しょおくん、ちゃんと寝てる?」

「うん」

それなりにね。
そう、心の中で思いながら返事をしたら、バレたらしい。

「……今日は俺、食ったら帰るね」

「はぁっ!?」

カレーを頬張ったまま叫んだら、ご飯粒が口から飛んだ。






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