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時計じかけのアンブレラ

第7章 晩夏

情事の余韻に浸りウトウトしながら、頭の一部では次の仕事のことを考えていた。

連想で、とある映画の映像が浮かんでくる。
イーストウッド監督の、南ア、ラグビーを取り扱った作品。

マンデラ大統領は獄中にあっても自由を求める魂を病むことがなかった。
諦めてしまえば、むしろ楽だっただろうに。
気が触れてしまってもおかしくない日々の中で、彼が情熱を失わずにいられたのはビジョンがあったからだ。
夢が、あったからだ。

何一つ自由にならず、ただ命令通りに作業をこなす獄中生活。
人種差別で人格さえ否定された罪人としての生活を送りながら、彼は常に同胞の自由を守ることを考え続ける。

ようやく社会に戻った時、彼の元には命さえ捧げようとする信奉者が大勢居たが、家族との温かな暮らしは失ってしまった。

つらつらと夢うつつに連想されていく思考は、最終的に俺の隣で眠る人に行きつく。

番組の企画で踊る姿を見て、どれだけの人が今後も貴方の踊りを見たいと望んだことか。

たとえどんな形になったとしても、智君はステージを捨てられないだろう。

俺は貴方の傍に居続ける。
いつも。
ずっと。

「あぁ……」

しみじみと何かを想い描くような、智君の声が聴こえた。
つられて思わず目を開ける。
ほよんとした顔が、俺と目が合うとふにゃっと変わって。
愛おしくて、また貫いてしまう。

お互いに、持て余すエネルギーをぶつけ合うように抱き合った後だから、今度は貴方を満たすためだけに抱いた。

激しく打ち付けることはせずに、ゆるゆると腰を動かす。

「あぁ……」

目を閉じたままの貴方が、俺の下で揺蕩う。
疲れてもう声も出ないのか。
溜息のような掠れた声が、半開きの唇から柔らかく漏れ出る。

気持ちいい?

そう言葉に出さなくても、十分にリラックスして感じているのがわかる。

何度も繋がり、肌を重ねて来て、俺達のセックスも変わった。

奪うように、征服するように、コントロールに夢中になっていた若い交わりから、差し出すように、相手の一番淋しいところを温めるような行為へ。

お互いに受け入れ、与えながら、相手の全部を許している。

普段は触れられることを嫌がる膝の上。
腿に至る性感帯をきゅっと握ってから、付け根に向かってさすり上げる。

「あ、ん…んん……」

あぁ、締まる。

喘ぐ声が甘くなった。





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