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時計じかけのアンブレラ

第9章 サナギが見る夢

青江さんの世界では、嵐は休止、しなかった…?

「えっと…それは…?」

混乱してきて、どゆこと?って考えたけど。
よくわからない。

青江さんが呟くように続ける。

「そうか…同一線上じゃないんだ
でも交わることは出来る……
…………
こっちは…助けられるかもしれない…」

ゆらゆらと揺れてた瞳がやがて静止して。
目を閉じた青江さんは、唇を指で触りながら、もう片方の手で膝辺りの生地を摘まんでた。

指で擦り合わせる癖も、まつげが描く綺麗なアーチも、ほんとに今の翔君にそっくりで。
その青江さんの隣には、もうオイラが居ないって…。

「しょおくん
オイラもしかして、何か病気?
このまま、しょおくんの前から消えるの?」

恐る恐るたずねると、目をつむったままの眉間に一瞬皺が寄った。

でも、ゆっくりと開けた時には、視線がしっかりオイラをとらえてて。
青江さんの翔君は、いつもの物凄く優しい顔で微笑むと、小さく首を振った。

「ごめん、大丈夫だから…
そんなに不安そうな顔をしないで
俺の世界と智君の世界は違う
休止を選んでいたら、きっと貴方は俺の隣に居た筈…
しっかり、ゆっくり休んで…
そうすれば大丈夫だから…
貴方はこっちの翔と離れたりしない
約束する」

でも。

「でも、オイラ入院してるもん
これって…」

「違う、そうじゃない」

青江さんがオイラを抱き寄せる。
胸がドキドキして変な汗が出て来た。
怖い。

「青江さん、ほんとのこと言って…?
オイラ、もしそうなら
ちゃんと、ちゃんといろいろ準備しなくちゃ」

耕太みたいに。

「智、落ち着いて
俺が貴方に嘘をついたことある?
ないでしょ?」

「あるもん
前にオイラのおやつ食べた時、食べてないって嘘ついた
初めてオイラが泊った時だって、
次の日遅いから大丈夫、って嘘ついたし
しょおくんは、
しょおくんは頭が良いからっ
必要だったら嘘だってつけるもんっ」

こっちは真剣に言ってるのに。
ダハッ、って吹き出す声がした。

抱き締めてた体を静かに離して、にこって笑う。
大好きなその笑顔に見惚れてたら、ちゅっ、ってキスされた。

あれ?

思わずビックリして固まる。

「これって浮気になる?」

オイラが訊いたら青江さんはまたダハハッ、って笑って。
俺は櫻井翔なんだから浮気じゃないよ、って言った。





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