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時計じかけのアンブレラ

第9章 サナギが見る夢

二人、無言のまま見つめ合う。
お互いの頭にハテナマークが浮かんでるのが見えるようだった。

「嵐は一旦活動を休止って
みんなで何度も話し合って、2020年いっぱいで…
翔君の世界では違かったの…?」

「……え?」

「翔君、多分、未来から来たんでしょ?
そっちの世界では嵐は活動休止しなかったの…?」

青江さんの翔君は、オイラを見つめたまま呆然と首を振った。



それから。
二人で答え合わせをするみたいに、今まであったことを話した。

オイラが子供の頃から青江さんは時々会いに来てくれてたこと。
最初は小父さんて呼んでて、中学生の頃に名前を訊いたら「青江」って教えてくれたこと。

ずっと「青江さん」って人だと思ってたけど、そのうち翔君とそっくりなことに気がついて。
宮城の前に会いに来てくれた時、自分は違う世界から来た櫻井翔だ、って教えてもらった。

いずれ「青江」って役をするから、って。
あの時言われた通りになって。

だからオイラも信じたんだ。
青江さんは未来の翔君で、自分がオイラの傍に居られなかった時をフォローするために来てくれてたんだな、ってさ。

オイラの前に現れる時はいつも青い傘を持ってて。
だから、それで、こっちの翔君と区別してたんだよ、って話した。

「そうか…なんで青江さん、って呼ぶのかと思ったら
俺がそう名乗ったんだね(笑)」

「うん(笑)
そうだ、あのね
前に一回、オイラが寝言で青江さんを呼んだらしくて
翔君、オイラが浮気してると勘違いしたのか
凄い焦ってたことあったよ(笑)」

青江さんの翔君は、へ?って顔をして。

「そんなこと、あったかなぁ…?」

本気でわからないみたいに首を捻ってた。

「オオエさん、愛してる、って言ったんだって
多分、青江さんと聞き間違ったんだね、ふふっ」

青江さんはさみしそうに笑って、オイラの話を聴いてた。
考えてみれば、出会ってからずっと、この人の笑顔は静かで。
さみしそうだった。

「多分、今起きていることは
過去とか未来とか単純な事じゃないんだと思う
俺の生きてきた歴史では嵐は休止しなかったよ…
話し合いはした
何度も…
だけど最終的には
俺達はそのまま嵐を続けることを選んだ…」

青江さんの翔君は、話しながら次第に俯いていって。
答えを探すみたいに、瞳を揺らした。



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