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Happiness day

第21章 とまどいながら

中学に入学してすぐの頃
本好きなボクは、昼休みになると図書室へ通うようになった

そこでボクは、本以外にも好きなモノを見つけた 

ほぼ毎日のように、窓際の席で突っ伏しているソレは、おそらく上級生

窓から差す光が、カレを包み
少し寝癖の残る柔らかそうな髪が、茶色く透けて見える

まるで、窓辺に寝転んでる猫のようで
見ていて気持ちがほっこりする

カレが目に入る席に座り読書をする事が、昼休みのお気に入りの過ごし方となった


ある日の昼休み、いつもの席にカレの姿が現れる事はなく
残念に思いながら、読みかけの本を借りて帰ろうと図書委員の人の元へ

「お願いします」

借りる手続きをする為に、個人の図書カードと一緒に本を手渡す

ふにゃっと笑みを浮かべた当番の人が、ボクの手から本とカードを受け取り、手元に視線を落とす

「櫻井翔くんって言うんだ…」

柔らかい声で名前を呼ぶニュアンスは、ボクの事を知ってるかのよう

「はい…そうです」

「毎日来てるよね?
本、好きなの?」

「えっ?なんで毎日来てるって知ってるんですか?」

突然の問いに驚いた

はじめましての人だよね?
それとも、ボクが気付いてないだけで、会ってたりするのか?
図書委員だから、今までもここに来ていておかしくないし…

「俺も毎日来てるから」

やっぱりそうなんだ
ボクが知らなかっただけだったのか

「すみません、そうだったんですね
ボク、知らなくて…」

「ははっ!だろうね?
俺、いつも寝てるから」

寝てる?

「あっ!もしかして、あの窓際の席の人?」

今日は空席だった席を指す

「うん、そう」

ニコッと笑うその笑顔は、春の陽射しのようなあたたかさを感じた

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