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Happiness day

第21章 とまどいながら

家に帰って、ポケットから飴を取り出した

この飴を舐めてしまったら
大野さんを感じられる物が何もなくなってしまうと思って、舐める事が出来なかった

ボクは小さなビニールの袋にその飴を入れ
机の一番上の引き出しに、その飴をしまった

毎日、朝と夜に引き出しを開け
大野さんの代わりに『おはようございます』と『おやすみなさい』の挨拶をする

そうする事で、会えない寂しさを紛らわせていた
でもそれと同時に、大野さんに会いたい気持ちが増していく

大野さんの指定席だった場所は、今はボクの指定席

大野さんを真似して、たまにそこで昼寝する

大野さんといた2年間では、一度もした事なかったな…
大野さんも、ボクが本を紹介するようになってからは昼寝の回数は減っていた

たまに本を読みながら寝落ちしてる姿…可愛いかったなぁ…

無理に付き合わせてしまってるんじゃないかと思って、大野さんに聞いてみたら

『夢の中の世界もいいけど、本の中の世界も楽しいよ?
現実の世界も楽しいし
翔くんのおかげで俺は新しい楽しみを得ることが出来た』

その時の笑顔が本当に楽しそうだったから、ボクは安心して次々と本の話をした

本の話だけじゃない…
大野さんは、ボクがどんな話をしても楽しそうに相槌を打ちながら聴いてくれた

毎日、ほんの数十分だけだったけど
大野さんと過ごした日々は本当に楽しくて

こんな楽しい時間を、もっと過ごせたらいいのに、って、考えるようになった…

だから、大野さんを追って同じ高校に進学する事に決めた

もちろんその事は大野さんに報告出来てない

卒業式の日に伝えたら、どんな顔するかな?
迷惑がられる?それとも喜んでもらえる?

待ちに待った卒業式まで、あと一週間…

大野さんにお返しする飴を、そろそろ用意しなくちゃ

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