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Happiness day

第21章 とまどいながら

大野さんと出会って2年が経ち
今日は大野さんが卒業する日

おめでたい事なのに、ボクの心は寂しさでいっぱいだった

もう大野さんと会う事はないんだろうな…

大野さんとボクは、図書室仲間でしかないんだし
図書室以外で会った事もない

卒業式の今日は、本の貸し出しはしていない

それでもボクは、大野さんと唯一の繋がりであるこの場所に来てしまった

いつも大野さんが座る席に座っていると
誰も来るはずのない図書室のドアが、ガラッと開いた

そこに現れたのは、ボクの好きな笑顔

「翔くん、みっけ」

また会えた嬉しさで、勢いよく椅子から立ち上がる

「大野さん…まだ帰ってなかったんですか?」

「うん。翔くんにお礼してなかったからね」

トコトコと、大野さんがボクの前に歩いて来た

「お礼ですか?」

「そう。いっぱい本を紹介して貰ったお礼。
はいこれ」

大野さんが、握った手をボクに向かって差し出した

その下に開いたボクの手のひらに、小さな包みがポトンと落ちた

「飴?」

「学校で開けちゃダメだよ?」

ニコッと笑った大野さんに、コクンと頷いた

飴なら学校で食べるわけにいかない
ボクはそれをポケットにしまった

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

「ボクも大野さんにお返ししたいんですけど、今何も持ってなくて…」

まさか今日大野さんに会えると思ってなかったから…

「それなら、一年後に貰おうかな」

「一年後?」

「そう、一年後…
一年経って、翔くんが俺にお返ししたいと思ったら
翔くんの卒業式の日にここに来て?」

「ここって、ここですか?」

大野さんが首を縦に振った

大野さんがなんでそんな提案をしたのかわからないけど
一年後に、また大野さんに会える…

「わかりました。一年後、必ずここに来ます」

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