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Happiness day

第21章 とまどいながら

悩んだ末にボクが用意した物は、結局飴だった

だって、ボタンの代わりに何を返せばいいのかわからないんだもん

高価な物を返すと大野さんに気を遣わせそうだし、妥当な所だと思うんだ

季節限定で売っていたイチゴ味の飴を鞄に入れて
中学校生活、最後の登校をした

昇降口で、在校生が卒業生に『卒業おめでとう』のメッセージが付いた胸章を付けてくれる

「おめでとうございます」

ボクに胸章を付けてくれた後輩の女子から、お祝いの言葉を掛けてもらった

「ありがとう」

お礼の言葉を言って立ち去ろうとしたら、その子に呼び止められた

「あの…櫻井さん」

「ん?なに?」

呼び止めた割には、俯いたまま、なかなか言葉を発しないその子

「何か用があるんじゃないの?ないなら行くけど…」

そう言うと、意を決したように、その子は勢いよく顔を上げた

「ボタン…貰えませんか?」

「ボタン?なんで?」

「あ…えと…」

言い淀んでる彼女…その隣にいた子が、代わりに答える

「この子、ずっと櫻井さんのこと好きだったんです
だから、他に予約してる人がいないなら、第二ボタンあげてくれませんか?」

「…どういうこと?」

もしかして、大野さんがボクにボタンをくれた意味がわかる?

「どういうことって、そのままですけど?
好きだから、学ランの第二ボタンをくれって言ってるんです」

「だから、ボタンって何か意味があるの?」

「えっ⁉︎もしかして知らないんですか?
第二ボタンの意味」

「うん、知らない」

「マジですか…」

「マジです」

大野さんがボタンをくれた理由がそれなのかはわからないけど

ボクは第二ボタンをもらう意味を、その時初めて知った

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