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あなたが私の最高な人

第2章 Act.2-01

 瞼の奧にほんのりと明るさを感じた。

 私は目を覚ます。そして、ぼんやりとしたまま、辺りを見回した。

 死後の世界――にしては、ずいぶんと現実的な光景だ。
 無駄に広々とした部屋に、ソファーとテーブル、テレビ。
 そして、私が横になっていたベッドも、特に変哲のないダブルサイズだ。
 いや、ダブルサイズのベッドは普通に考えて変だ。

「ここ、どこ……?」

 夢の中にいる時までは幸せに浸っていたのに、急に不安を覚えた。
 冷静になって考えてみたら、ここはただの部屋じゃない。

 よく耳を澄ましてみたら、奥の方から水音が聴こえてくる。
 まさか、と思い、ベッドから降り、私は恐る恐る音のする方へと近付いてゆく。

 水音は、ドアの向こう側から聴こえる。
 考えるまでもない。
 それはシャワーの音だった。

「まさか、あの時に……?」

 お手洗いの前で意識を失う寸前のことを想い浮かべる。

 あれは死神などではなかった。
 誰かが私をここまで連れ込んだ、ということだ。

 ――逃げなきゃ!

 考えるよりも先に、私はソファーに置かれていた自分のバッグを掴み、部屋を出ようとした。

 と、その時だった。

 シャワールームのドアが開いた。

 急がないと、と思うのに、私の足は硬直したまま動かない。

 予想通り、そこから出て来た人物はバスローブを身に纏っている。
 とても怖くて、顔などじっくり見ていられなかった。

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