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あなたが私の最高な人

第2章 Act.2-01

「もう、私のことはどうでもいいってこと?」

 我ながら、ずいぶんと刺々しい言い方になってしまった。

 彼はやはり、困ったように微苦笑を浮かべている。

「どうでもいいなんて思っちゃいないさ。というか、どうでもいいなら、酔っ払って倒れた君を放っておけるわけがないだろ?」

「じゃあ、酔っ払って意識を失くした私をラブホに連れ込んだ理由は?」

「別に深い意味はない。一番ここが近かったから。ずっと気持ち悪そうにしていたから、俺のアパートまで持ちそうにないな、と思って」

 そこまで言うと、彼は項垂れて、「すまない」と謝罪してきた。

「やっぱり、俺がしゃしゃり出るわけにいかなかったな。君は君で先に進もうとしていたのに……。なのに、放っておけないからってお節介を焼いてしまって……」

 彼は髪をかき上げ、深い溜め息を漏らす。

 私はジッと彼の横顔を見つめていた。

 出逢った頃は何事にも動じない落ち着いた大人に見えた。
 けれど、ふとした瞬間に余裕がなくなることがある。それは今でも変わっていないらしい。

 それにしても、どうして急に彼が私の前に現れたのかが不思議だった。
 そもそも、一昨年から県外に異動になっていたのに。
 その疑問を彼に投げかけると、「実は」と切り出した。

「先週、またこっちに戻ることになってね。恐らく、しばらくは異動はないと思う」

「左遷?」

「君は言いづらいことをはっきり言うな」

 彼は笑いを含みながら続けた。

「君の期待に応えられなくて残念だけど、左遷じゃないよ。むしろ昇格した。その分、以前よりもだいぶ仕事がハードになってるけどな」

 そう言うと、彼は自分の左肩を回しながら右手で揉む仕草を見せる。

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