Immoral
第4章 刹那
私は何をしているのだろう――
彼に抱かれている間、不意に冷静な自分を取り戻す。
彼とのセックスはこれまでに経験したことがないほど気持ち良くて、このままどこまでも溺れてしまいたいとさえ思う。
けれど、彼を逢瀬を重ねることで彼の大切な人を傷付けてゆくことも分かっているから、彼の温もりを幸せな気持ちで素直に受け止めることは決して出来ない。
彼の家庭を壊す気はない。
だから、私は都合のいい女のままでいい。
なのに、彼の心を独占出来ないことに心がギシギシと軋む。
私が達してからほどなくして、彼の身動きもピタリと止まった。
少しばかり私の中に留まり、薄い膜越しに吐き出された欲望を黙々と処理すると、彼は私を強く抱き締めた。
「今夜はどうするの?」
彼の胸に顔を埋めながら私は問う。
彼は私の背中に両手を回したままの格好で、「そうだな」と言葉を紡いだ。
「今日は終電に間に合いそうだし。それに、あんまり外泊が多いのもさすがにな……」
「そうね。奥さんもとても心配してるに決まってるもの」
自分で口にしながら、また胸の奥がチクリと痛み出す。
奥さんのことを一番に考えてほしい。
それは私の本心なのに、それでも、心のどこかで彼を奪ってしまいたいともうひとりの私が囁く。
「ちょっと、訊いてもいい?」
私を抱く彼の腕の力が緩んだ。
ゆっくりと頭をもたげると、先ほどまでの甘い雰囲気とは一変して、真顔で彼が視線を注いでくる。
彼に抱かれている間、不意に冷静な自分を取り戻す。
彼とのセックスはこれまでに経験したことがないほど気持ち良くて、このままどこまでも溺れてしまいたいとさえ思う。
けれど、彼を逢瀬を重ねることで彼の大切な人を傷付けてゆくことも分かっているから、彼の温もりを幸せな気持ちで素直に受け止めることは決して出来ない。
彼の家庭を壊す気はない。
だから、私は都合のいい女のままでいい。
なのに、彼の心を独占出来ないことに心がギシギシと軋む。
私が達してからほどなくして、彼の身動きもピタリと止まった。
少しばかり私の中に留まり、薄い膜越しに吐き出された欲望を黙々と処理すると、彼は私を強く抱き締めた。
「今夜はどうするの?」
彼の胸に顔を埋めながら私は問う。
彼は私の背中に両手を回したままの格好で、「そうだな」と言葉を紡いだ。
「今日は終電に間に合いそうだし。それに、あんまり外泊が多いのもさすがにな……」
「そうね。奥さんもとても心配してるに決まってるもの」
自分で口にしながら、また胸の奥がチクリと痛み出す。
奥さんのことを一番に考えてほしい。
それは私の本心なのに、それでも、心のどこかで彼を奪ってしまいたいともうひとりの私が囁く。
「ちょっと、訊いてもいい?」
私を抱く彼の腕の力が緩んだ。
ゆっくりと頭をもたげると、先ほどまでの甘い雰囲気とは一変して、真顔で彼が視線を注いでくる。