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Immoral

第4章 刹那

「いつまでこの関係を続けるつもり?」

 予想もしなかった彼の問いに、私は思わず目を見開いた。

「――ごめん……」

 私が怒ったと思ったのか、彼はばつが悪そうに私から目を逸らし、ポツリと謝罪してきた。

「私のこと、飽きた?」

 怒っていると誤解された手前、出来る限り冷静に訊ねる。

 彼は相変わらず私と目を合わせようとせず、けれど、「そんなことはない」とはっきり答えた。

「ただ、ちょっと心配になっただけだ。――俺がいるせいで、君は新たな恋が出来ないんじゃないか、って」

 ずいぶんと、自分勝手なことを言う。
 なのに、彼を責める気にはなれない。

 結局、私の存在こそが奥さんにとっては癌そのものなのだから。
 たとえ、私達のことに気付いていなかったとしても、だ。

「――私は、恋なんてしないわ……」

 私は静かに答えた。

「ただ、あなたを癒せればいい……」

 これは本心であり――嘘だ。

 どうせ、彼を私のものになんて出来ないのだ。
 こんなに側にいても、届きそうで届かない。
 どれほど私が強く願っても、彼は最後は一番大切な人の元へと帰ってゆくのだから。

 ならばせめて、私を必要としてくれている間だけでも抱き締めてほしい。
 狡いと分かりつつ、私は彼に深く口付けた。

[刹那-End]
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