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Immoral

第3章 Egoistic

 得意先への重大トラブルを起こし、遅くまでその対処に追われた。

 上司には頭ごなしに罵倒され、得意先からは、上司ほど怒鳴られなかったが、精神的な攻撃を受けた。

 終わった頃には疲れ果てていた。

 家では妻が待っている。
 しかし、こんな姿を見せたくはない。

 俺は無意識に、ジャケットの内ポケットから携帯を取り出していた。
 そして、躊躇いもせず電話をかける。

 一回、二回……コール音が鳴り続き、四度目で音が途切れた。

『どうしたの?』

 挨拶もそこそこに、相手は訊ねてくる。

 柔らかなその声に、俺の心にじんわりと温かなものが広がった。

「これから行ってもいいか?」

 俺も挨拶を省き、要件を告げる。

 電話の向こうの彼女が息を飲む。
 多分、返事を躊躇しているのだろう。

『――いいわ』

 しばらくの間を置き、彼女から返答が戻ってきた。

「すぐ行くよ」

 俺はそう言って、一度通話を切った。

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