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君の光になる。

第5章 美容室

 次の日、夕子はいつもの時間に安倍と会った駅に向った。雑踏に押されるように同じベンチに腰掛ける。秋風にしては風が冷たい。
 
 トニックシャンプーの匂いを感じた。
 
 ――安倍さん?
 
 トニックシャンプーの匂いが雑踏と共に通り過ぎる。
 
 プシューという電車の扉が開く音の度、雑踏が動くのを感じた。電車が到着する旨のアナウンスに耳を傾ける。
 
 ――次の電車が来たら……。
 
 電車が滑り込んでは、滑るように再び動き出す。雑踏の音。
 
 また、トニックシャンプーの匂いがした。押し合うような雑踏の音。
 
「こんにちわ……立花さん」
 
 ――安倍さん。
 
 夕子の右側がキュっと軋み、ベンチが揺れた。トニックシャンプーの匂いが近くなる。

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