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君の光になる。

第5章 美容室

 ドライヤーの轟音が止むとブラシが夕子の胸元を走った。夕子の肩に手が掛かる。
 
「お疲れさま……」
 
 夕子の背後で安倍の声が聞こえた。
 
「あの、髪……いいですか。触っても……」
 
「ああ、どうぞ……」
 
 自分の髪が広末涼子になったか、否かは問題ではなかった。夕子は自分の髪を撫でてみた。毛先が手のひらに触ってこそばゆい。
 
「……ちょっと、男の子みたいじゃないですか?」
 
「ああ、かも知れませんね。だけど、僕は似合っていると思いますよ。とても可愛らしいですよ……」と、安倍の声が静かに答えた。
 
「……ならよかった……」
 
 夕子は笑いながら言った。
 
「……立花さん……」
 
 安倍の真面目な声が更に真面目に聞こえた。目の前の光が遮られたのが分かる。夕子も真面目に返した。
 
「はい……」
 
 トニックシャンプーの匂いが近づいた。

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