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君の光になる。

第8章 ひとりで

「あの、私、道探しているんですが……多分、美容室だと思うんですけど……安倍さんっていう人がやってるんですが……」
 
「ああ、もしかして……あ、はい、私が髪切ってるお店かも……」
 
「肘か肩、貸してもらってもいいですか?」
 
 と、夕子は左手を女性の肩に置いた。
 
 夕子の右横を次々とエンジンの音が近づいては遠ざかる。その度、衝撃のある風が夕子の髪をなびかせる。
 
「最初に来たときより、車通りが多いみたい……」
 
 身体に力が入る。振動と共に、大きな車の音が次から次へと近づく。
 
 女性が立ち止まり、細い腕が夕子の腕を通った。
 
 身体の力がすうっと抜けた。
 
「今は歩道だからね、大丈夫だけど、時々自転車が危ないの」
 
 夕子の後ろでキィっという音がして、チリンチリンとベルの音がした。ビクリとして転びそうになった。

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