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年の差は媚薬

第1章 1章

「おばさん、パソコン詳しいの?」

隣の高校生だ。

私がノートパソコンを修理に出すときに、むき出しで車に積むところをみていたのだろう。

彼とは挨拶程度に会話をする。

「あんまり詳しくないけど、なんで?」

「パソコン始めたいんだけど、詳しい友達いなくて…」


30秒くらいの会話だったけど、これまでで最長だった。

「かんたんなことなら教えられるけど、パソコンは持ってるの?」

「ないんです」

最近じゃ誰でもIT武装していると思ったら、こんな子もいるんだと、ちょっと驚いた。

一般的におばさんが若い男にパソコンを教えるなんて、逆パターンである。


「うちに古いのあるから、よかったら使う?」

7年前に買ってまだ現役で使えるパソコンを私は持っていた。

しかし…

ここまで長くこの子と話したことなかったけど、礼儀正しいし感じのいい子だな。

彼は”おそらく”母子家庭だ。


私がこのマンションに引っ越した時にはすでに彼らはいたが、一度も旦那を見たことがなかった。

私もバツイチ独身だけど、今じゃこんな変則家庭はめずらしくもない。

「え!いいんですか!?」

若さ弾ける表情で彼は笑顔になった。


「でも高価なものだから…」

といっちょまえに気遣いまで見せる彼が少し可愛く思えた。

彼はイケメンではないけど、ブサイクでもない。

あんまり友達といるところも見ないけど、どんな学生なんだろう?

特徴のあまりない男の子だ。


「いいわよ、気使わなくて。使わないからゴミと一緒だし」

「え?そうなんですか!?いいんですね?」

言い忘れたが、この一連のやり取りは、玄関ドアの前の廊下でのことだ。

私は自分の家のドアを開けながら言った。


「じゃあ、取りに来て」

「はい!」

2年前にクソ亭主と離婚して、一人でここに住んでいる。

セックスレス10年も続けた挙句に浮気しやがったから、離婚してやった。

田舎の広告代理店だけど、一応私は「係長」だから、社会的立場も収入も私の方が上だったけど、ヤツの退職金前借りさせて慰謝料もキッチリぶんどってやった(笑)

ここに”男”を入れたのは初めてだ。

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