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その瞳にうつりたくて…

第6章 友達

レッスン室の鍵を締め、その鍵を誰もいなくなった事務所に返す。
スクールを出る際にふっと思った。

彼女はいつスクールに来ていつ帰ってるんだろう。
俺が帰る頃にはもう帰ってるんだろうか。
一人暮らし?
いや、一人暮らしをするには少し不便だろうな。
ってことは、実家がこの辺にあるのか?

俺は東京でずっと一人暮らしで、東京の暮らしには慣れたが彼女はどうなんだろうか。

明日はそれを聞いてみようか…。
ストーカーみたいな質問になりはしないだろうか…。

彼女の悪戯っぽい笑顔は、東京暮らしで荒んでいる俺の心を癒してくれる。
たまにその悪戯に振り回されて焦るときもあるが、彼女が楽し気に笑う笑顔を見てるとこちらまで釣られて笑ってしまう。

本当に…、不思議な女の子だ。






今日の俺はどこかおかしい。
彼女の悪戯に振り回されてから、イライラしたり生徒に八つ当たりしたり、今までの自分じゃ考えられない事ばかり。

「しっかりしねぇとな…」




俺は、彼女に嘘をついてる。
偽名を使って彼女のそばにいようとしてる。

でも、許されるならもう少しだけ…。
もう少しだけ、彼女の悪戯っぽい笑顔に振り回されたいと思ってしまった。




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